目次
第7話ストーリー
 水曜日の朝。
 こはるはいつものように通学路を歩きながら、昨日のノートの言葉を思い出していた。
「明日は、“誰かを励ます言葉”をかけてみて。」
 誰かを励ます——それは、こはるにとって少し難しい課題だった。
 だって、自分だってまだ励まされたい側なのに。
 学校に着くと、廊下の隅で俯いているクラスメイトがいた。
 美月(みづき)ちゃん。いつも明るいのに、今日は少し元気がない。
 周りの子たちは気づかないまま通り過ぎていく。
 こはるは立ち止まり、心の中で迷った。
 ——どうしよう。声をかけても、うまく話せる自信がない。
 でも、昨日のノートの言葉が頭をよぎる。
「自分を認めることは、未来を信じること。」
 こはるは深呼吸をして、歩み寄った。
「美月ちゃん、おはよう。……今日の髪型、すごく似合ってるね。」
 思いついた言葉は、それだけだった。
 でも、美月ちゃんは一瞬驚いたあと、小さく笑った。
「ありがとう。実はちょっと失敗したかもって思ってたけど……そう言ってもらえると嬉しい。」
 その笑顔を見た瞬間、こはるの胸の中がふわっと温かくなった。
 言葉って、不思議だ。
 たった一言で、誰かの心を少し明るくできる。
 放課後、こはるはノートを開いた。
 そこには新しい言葉が、金色のインクで浮かんでいた。
「やさしい言葉は、光のように広がる。
明日は、“ありがとう”をもらったときの気持ちを書いてみて。」
 こはるは笑顔でペンを取った。
 ——今日は、誰かを励ませた。
 それだけで、少しだけ自分のことが好きになれた気がした。
今日のひとこと
「やさしい言葉は、光のように広がる。」
次の課題(ノートより)
明日は、“ありがとう”をもらったときの気持ちを書いてみて。

 
			 
			 
			 
			 
			 
			
コメント