目次
第5話ストーリー
 月曜日の朝。こはるはいつもより少し軽い足取りで登校していた。
 ノートに書かれていた昨日の言葉が、まだ頭の中に残っている。
「明日は、“誰かのいいところ”を見つけて伝えてみて。」
 “いいところを伝える”なんて、今まで意識したことがなかった。
 でも、少しワクワクしている自分がいた。
 校門をくぐると、同じクラスの佐伯さんが花壇の花に水をあげていた。
 いつも静かで、あまり話したことがない。
 こはるは一瞬迷ったけれど、勇気を出して声をかけた。
「……おはよう。いつも花に水あげてるんだね。なんか、すごくきれいに咲いてる。」
 佐伯さんは驚いたように顔を上げた。
「えっ、あ……ありがとう。花、好きなんだ。」
 そのときの彼女の笑顔が、朝の光に溶けて見えた。
 それを見て、こはるの胸の奥がじんわり温かくなった。
 授業中、こはるは気づく。
 人の“いいところ”って、探そうとすると、ちゃんと見える。
 隣の席の男子が忘れ物をした友達にノートを貸している。
 体育が苦手な子が、頑張って最後まで走っている。
 クラスのいろんな場面が、少し違って見えた。
放課後。机の上にノートを出すと、今日も新しいページが開かれていた。
「人のいいところを見つけられる人は、自分のいいところにも気づける。
明日は、“自分の中の好きなところ”をひとつ探してみて。」
 こはるはゆっくりページを閉じて、カバンにしまった。
 窓の外の夕陽が、机の上にオレンジ色の光を落としている。
 ——“いいところ”って、きっと、どんな人にもあるんだ。
 そして私にも。
 こはるの心の中に、小さな芽がそっと顔を出した。
今日のひとこと
「人のいいところを見つけられる人は、自分のいいところにも気づける。」
次の課題(ノートより)
明日は、“自分の中の好きなところ”をひとつ探してみて。

 
			 
			 
			 
			 
			 
			
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