🏢 基本情報
区分 | 内容 |
---|---|
企業名 | TOYO TIRE 株式会社 |
証券コード | 5105 |
業種 | ゴム製品 |
上場市場 | 東証プライム |
決算期 | 12月31日 |
📝 企業概要と特色
TOYO TIRE ㈱は乗用車・SUV向け「OPEN COUNTRY」やモータースポーツブランド「PROXES」を擁し、北米・欧州・アジアに広大な販売網を展開するタイヤ専業メーカー。今期は“事業とサステナビリティの融合”を鮮明にし、7つのマテリアリティを軸に経営をドライブする。「全企業活動における脱炭素追求」「サプライチェーン全体の人権・環境リスク管理」「多様な人材の挑戦と働きがい」など、ゴム産業では先駆的なコミットメントを公表。一方で、レース活動を通じて培った技術を一般タイヤへフィードバックし、転がり抵抗の大幅低減やサステナブル原材料の配合率向上を実現している点が特色である。
👶 育児休業制度と人的資本戦略
- 「中計’21」 で人的資本をコア基盤と定義し、(①多様な人財が協働し働きがいを持つ仕組み ②能力を極める育成システム)の2軸で投資を実行
- 育児・介護を阻害要因にしない環境整備を宣言。2024年行動計画では「男性含む育休取得率100 %」を掲げ、制度面(子の看護休暇有給化/有休型育休日数拡大/失効年休復活制度など)と職場面(上司面談ガイド・取得計画表)をセットで運用
- 在宅勤務100 %選択可+フリーアドレス本社 により、育児期・転勤帯同・地方Uターン社員もパフォーマンスを落とさず就労可能
- ダイバーシティ浸透を目的にe‑ラーニング×外部講演を年4回以上実施し、受講率は9割超。アンコンシャスバイアス研修を課長層必修とするなど管理職行動もアップデート
- 組織人事委員会が人事戦略を審議し、サステナビリティ委員会と連動してKPI進捗を取締役会へ報告。経営層が主語で議論する仕組みが特徴

📊 定量実績・数値目標(提出会社単体)
指標 | 2024実績 | 目標・KPI | 補足解説 |
---|---|---|---|
女性係長級比率 | 8.8 % | 2016年比4倍超 | 製造業でネックになりやすい監督層の“層厚み”を着実に改善 |
女性課長級以上登用比率 | 0.75 倍 (対男性登用比3年平均) | 0.8〜1.2 倍 | 選抜研修・メンター制度で母集団を増強中 |
年次有休取得率 | 64.8 % | 70 %台へ | 生産拠点は計画付与/事務技術拠点はワークライフ年休で上積み |
育休取得率 | 男性100 %/女性100 % | 維持 | 3か月以上取得の男性比率も公開予定 |
研修受講満足度 | 83 % | 75 %以上 | DX・ESGモジュールを階層別研修へ完全統合 |
🌱 制度の強みと独自性
- ハイブリッドワークを“事業成長施策”として位置づけ
- 就業場所選択の自由度を業務生産性指標(納期短縮率、会議時間削減率)とひも付けて可視化。単なる福利厚生にしない姿勢が他社と一線を画す。
- プロフェッショナル再雇用制度の刷新
- 再雇用後は専門職グレードに就ける仕組みを導入。シニア技術者がR&Dや品質監査を担い、若手へ技能伝承。
- “挑戦と学習”両立型の研修体系
- 選抜型Global Leadershipプログラムは北米・欧州の実拠点で実践研修→経営計画に直結する課題をプレゼン。優秀者は海外子会社CXO候補パイプラインへ。
- ライフイベント手厚さ×データドリブン改善
- 育児・介護制度の利用実績を半年ごとに人事データベース化。利用率/復職後定着率を公開し、制度の“絵に描いた餅化”を防ぐ。
📚 働き方のヒントと展望
TOYO TIREの施策は「製造業×グローバル」という制約を逆手に取り、“場所・時間”の制限を外すことで挑戦を加速する好例だ。ハイブリッド勤務を恒久化しつつ「オフィスは協創拠点」と再定義した結果、部門横断PJの発足数が1年間で1.7倍に増えたという。さらに、女性係長層を起点にした“すそ野拡大→幹部輩出”モデルは、女性候補が枯渇しがちな重工・化学系企業でも参考になる。今後は、
- サステナブル原材料40%達成へ向けたラボ拡充に伴い、科研系女性リーダーの登用加速
- AI/IoT×タイヤセンシングの新規事業でデジタル人材の外部採用+リスキリングを本格化
- EUカーボンボーダー調整に備えたGHG原単位開示が、人的資本指標(技能充足率・研修投資額)と統合される見込み
等の動きが見込まれる。「サステナビリティKPI」と「人材KPI」を経営計画に同列で置く同社のアプローチは、投資家にとっても企業価値評価の新しい物差しとなりそうだ。
※本記事は2025年3月26日提出の有価証券報告書をもとに作成しています。
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